星新一風

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星新一風

犯罪対策

作者:サイ
 エヌ氏が買い物から帰ると、家の前に不審な男が居た。こちらには気づいていない。
様子を見ていると、玄関の鍵穴に針金のようなものを差し込もうとしていた。
「何をしている! 警察を呼ぶぞ!」
エヌ氏が怒鳴り声を上げて近づくと、男は慌てる様子もなく、丁寧に話し始める。
「失礼しました。ご不在のようでしたので。私こういう者です」
手渡された名刺には、空き巣対策商品販売部とある。
「先日、お手紙をお送りしたと思うのですが、本日は試供品をお届けに参りまして」
そういえば、そんな手紙を受け取った気もする。エヌ氏はまだ納得がいかなかったが、
相手があまりにも悪気がなさそうに話すので、拍子抜けしてしまった。

「まあ、立ち話もなんだし、中でお茶でも」
エヌ氏は男を応接室に招き入れることにした。
「この辺りは人通りも少なくてね、今日も防犯グッズを買って来たところなんだ」
エヌ氏は買い物袋を見せて、台所に向かう。
「どうぞ、お構いなくー。最近は防犯商品も色々開発されてますけれど……」
男は応接室で大声で話し続ける。「空き巣の側の道具も増えて、いたちごっこの世界でして……」
男はスーツケースを開けて、試供品をテーブルに並べた。

「こちらが試供品になります」
エヌ氏が応接室に戻ると、色々な商品がテーブルに並んでいた。見たこともないものばかり。
「さすがは新商品のようだね。これはどうやって使うのかな」
エヌ氏がボーリングの玉のような物を指さすと、男は説明を始める。
「こちらはこちらに指を入れまして、どうぞ。ええ、両手の指を入れまして」
「おお。あれ、指が取れなくなったぞ。おいおい」
「大丈夫です。続いてこちらのロープで足などを縛りまして」
「ありゃ。動けなくなったぞ」

男はエヌ氏に猿ぐつわを噛ませると、悠々とお茶をすすりながら、部屋を物色した。戸棚に
名刺入れが見える。目がかすみ、体がしびれ始めた。名刺には、テロ対策薬物開発部とあった。

 

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